税務調査の手続きについては、基本的に国税通則法という法律において定められていますが、そのなかには提出物件の留置きという条文が見られます。これは、税務調査の対象となった事業所に会議室などの十分なスペースがなく、帳簿書類をその場で税務署の職員が容易に閲覧できないような場合や、事実確認のために職員がくわしく調べる必要がある場合などに認められているもので、職員が帳簿書類を納税者のもとから持ち去って預かるということを指しています。法律上、税務署では帳簿書類の留置きができると定められてはいるものの、税務調査はあくまでも犯罪捜査とは異なりますので、警察が証拠書類を押収する場合のようにはいかず、基本的には納税義務者に趣旨を説明したのち、その承諾を得て税務署に留置きをするということになります。もしも納税義務者の側から返還してほしいという申し出を税務署に対して行った場合ですが、これも基本的には留置きの必要がなくなれば遅滞なく返還することになっています。

ただし、帳簿書類が膨大であり、コピーするのに時間がかかるなどの理由がある場合には、返還されるまでに多少の時間がかかってしまうというケースも存在します。なお、再三にわたって帳簿書類の返還を申し出たのにかかわらず、なかなか返還してもらえないという場合ですが、こうした場合には、帳簿書類を持ち去った職員がいる税務署の署長に対して、異議を申し立てることも可能となっています。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です